封鎖都市・武漢の76日間をリモート取材
J-School '11年秋入学
房 満満
 
 5月4日、NHKBS1スペシャル「封鎖都市・武漢〜76日間・市民の記録〜」という番組が放送されました。76日間に渡る武漢の封鎖生活が綴られた『武漢封城日記』と、武漢市民の声を記録してきたネットラジオを組み合わせて、市民の目線から封鎖都市の現実を伝えようと制作した番組です。
 
 ドキュメンタリー制作はいつも大変なことだらけですが、今回は今まで以上に様々な困難がありました。まず中国に渡航できないこと。取材先に会えないままどう信頼関係を作るか。SNSやビデオ電話などで本当に信頼してもらえるのか。それに、ロケの制限が日に日に厳しくなり、何を使ってどこまで「撮影」を実現できるか。また、「武漢」を伝えるには様々な角度があり、どこに焦点を当て、何を伝えたいのか
 
 コロナの感染拡大が始まってから、どのチャンネルをつけてもコロナの報道で溢れています。でも、そのほとんどが感染者数や新規者数などを発表するものです。窮地に陥る人の声はたまに聞こえてきますが、長くても10分で終わってしまいます。パンデミック社会の恐怖や不安、不条理についてじっくり考えることができる番組、また、学者や著名人ではなく、その社会を生きる普通の人の営みをゆっくりと感じられるような番組にしたいと考えました。コロナの影響で他人とのつながりが物理的に打ち切られてしまっている今だからこそ、「人」を感じることが大事だと思い、そして、コロナ禍が“過ぎた”10年後や20年後、この時代を振り返るときに、最も確かな手がかりは「人々がどのように日々を過ごしたか」の記録だと思うからです。
 
 コロナの感染拡大が「伝えること」を難しくしていますが、決して不可能ではないということを実感しました。人と人が会えず、国と国の交流が途切れて、世界の分断が生じた今だからこそ、メディアがその現実を伝え、そして様々なつながりを取り戻す一役を果たすべきだと思います。
 
番組HPはこちら:
 
同窓会報第11号記事
2020.5.14配信