シンポジウム「ジャーナリズムの危機」開催

「ジャーナリズムの危機」
 早大でシンポジウム

 

 J-Schoolシンポジウム「ジャーナリズムの危機~アメリカ・メディアの現状と新聞の未来」が7月25日午後、早稲田大学大隈小講堂で開催された。学生や研究者、メディア関係者ら約180人が参加した。

 広告収入の激減などで名門地方紙の破綻が相次いでいるアメリカの現実を知り、日本のジャーナリズムの今後を考える目的で、早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムスクールが主催した。

 佐藤正志政治学研究科長の開会挨拶に続き、奥村信幸・立命館大学准教授と茂木崇・東京工芸大学専任講師が、米マスメディアの現状について詳しく報告した。

 昨年9月から半年間、ワシントンDCに米大学の客員研究員として滞在した奥村氏は、新聞やテレビ業界に見られる記者の大量リストラや制作経費削減の現実を紹介し、そうした取材体制の貧弱化が昨年暮れの大統領選報道の質の低下を招いた点を指摘した、茂木氏は、定期的な現地調査を続けているニューヨークタイムズ紙の経営問題を取り上げ、同社が検討している、ネット記事への課金、減量経営、ニュースシェア、NPO化などの生き残り戦略について報告した。

 コメンテーターとして、坂東賢治毎日新聞外信部長(前北米総局長)は、ネット上の報道メディアであるハフィントン・ポスト(Huffington Post)やポリティコ(Politico)に言及し、先の大統領選では、ネットメディアが大きな影響力を持ったと述べた。また、小林宏一早稲田大教授(メディア産業論)は、米上院公聴会「ジャーナリズムの未来」での議論を参考に、インターネットの普及が促した「the atomic unit of consumption」(消費の最小単位化)という価値観が、パッケージとしての新聞の価値を喪失させ、読者離れを引き起こしたのではないか、と指摘。「寄生虫(アグリゲーターなど)が宿主(マスメディア)を静かに殺しつつある」という問題を考えるべきだと提起した。

 後半のディスカッションでは、瀬川至朗早稲田大教授がコーディネーターを務め、議論の焦点を、(1)新聞危機の要因、(2)これからの新聞の運営モデル、(3)オンラインジャーナリズムの可能性――にまとめた。ディスカッションの時間が少なく、日本の新聞の議論がほとんどなかったのは残念だったが、アメリカの新しいネットメディアが、既存メディアのお株を奪うような権力批判の特ダネを報道していることが示され、新聞(紙)とネットが互いの良い点を学びあうことで、新しいジャーナリズムの構築を期待できる可能性が示唆されたシンポジウムだった。

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